マルセル・デュシャンの作品の革命性については、さまざまな人たちによって論じられてきている。このたび、私はデュシャンの初期の作品、「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」、通称、「大ガラス」とその周辺の作品、いくつかのレディ・メイド、「オブジェ・ダール」などについて、文明史、美術の引用、性にまつわるもの、デュシャン自身の自伝的要素といった側面から考えてみたので発表したい。
ただし、「1.水の落下 2.照明用ガス が与えられたとせよ」、通称「遺作」については副題に示したようにほんの少ししか触れることができなかった。
私がデュシャンの作品に出会ったのは中学生の頃であった。父の美術雑誌で「ロト・レリーフ」や「大ガラス」などを見た。「これは絵なのだろうか」と疑った。そして、そのことで強くひかれた。デュシャンは1968年に亡くなったが、そのとき私は大学4年であった。翌69年に「遺作」が公開され、日本でも図版で紹介された。それを初めて見た時は胸が悪くなったというのが率直な感想である。それまではデュシャンは「ダダの法王」であり、現代美術の最大の擁護者あり、「大ガラス」の後は美術を降り、余生を楽しんでいる老大家といった紹介のされ方だったから、大変な衝撃だった。
おそらく世界中でそうだったことだろう。
* * *
デュシャンを考えるきっかけとなったものは、故東野芳明の「マルセル・デュシャン」と「マルセル・デュシャン 『遺作論』以後」の2冊のデュシャン論と彼が中心となって企画された「マルセル・デュシャン展」の図録である。感謝いたします。
- ♢「マルセル・デュシャン」 美術出版社 1977年
- ♢「マルセル・デュシャン 『遺作論』以後」 美術出版社 1990年
- ♢「マルセル・デュシャン展」図録 高輪美術館 セゾン美術館 1981年
また、次にあげる本がなかったら考えを進めることができませんでした。ともに感謝いたします。
- ♢「デュシャンは語る」 ピエール・カバンヌ 岩佐鉄男・小林康夫訳 ちくま学芸文庫
1999年 - ♢「デュシャンとの対話」 G・シャルボニエ 北山研二訳 みすず書房 1997年
- ♢「マルセル・デュシャン全著作」 北山研二訳 未知谷 1995年
- ♢「マルセル・デュシャン」 カルヴィン・トムキンズ 木下哲夫訳 2003年
- ♢「芸術新潮 特集 謎の男 マルセル・デュシャン」 解説 平芳幸浩 新潮社
2005年2月号
* * *
これからの文章のなかで「性交」、「妊娠」、「出産」といった言葉が出てきますが、私はさまざまな事情や考えで子供を持たない、作らない人々やシングル・マザー、シングル・ファーザー、また、同性を愛する人たちを非難しません。
私は信教の自由を認めるとともに、信仰を持たない人々を排斥することはありません。
* * *
このエッセイのなかの絵画や図はさまざまな印刷物、インターネットから借用しました。ですから、著作権については問題があります。また、所有者を特定できず、クレジットの付けられない作品もありました。ご了承、願います。
