デュシャンにはダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の複製画にひげを描いた「L.H.O.O.Q.(図1)」がある。このアルファベットをフランス語で読めば、「彼女はお尻が熱い」となることはよく知られている。私はフランス語ができないが、この際どいごろ合わせを面白く思う。

そして、デュシャンとダ・ヴィンチの関係はいろいろな人々にさまざまに論じられてきている。


  • 図1

私はダ・ヴィンチの解剖図に注目しているものがあった。

デュシャンはダ・ヴィンチの解剖図(注1)を下敷きにして「雌の縊死体」を作ったのではないだろうか。その解剖図には一枚の用紙に胎児のいる子宮と腕がデッサンされて(図2)いるのである。ただ、そのふたつが何故、一緒に描かれているのか、私には分からない。

さて、こういう作業をしてみよう。だ・ヴィンチのメモは鏡文字で描かれている(注2)ので、デッサンを裏返す(図3)。つぎに、胎児は本来は母親の子宮の中で頭を下にしているので(注3)、デッサンの天地を逆にし(図4)、傾ける(図5)。そうすると「雌の縊死体」(図6)と非常に似てくる。

「雀蜂 セックスのシリンダー」とよばれている部分は子宮ではないだろうか。しかも、懐胎している。

若桑みどりは「イメージを読む」の「《モナ・リザ》の謎」の節で「…彼女の身につけているものは喪服とされています。また多くの学者が注目したように、彼女は明らかに、おなかが膨らんでいます。…(注3)」と述べている。

 「L.H.O.O.Q」と「雌の縊死体」はどちらも妊娠している。


  • 図2

  • 図3

  • 図4

  • 図5
  • 図6

  • 図1フィラデルフィア美術館 図2 ウィンザー王立図書館
  • 注1 ウィンザー王立図書館蔵
  • 注2 ダ・ヴィンチの解剖図集では、子宮の中で胎児が頭を上にしていることについて、諸説あるようであるが、ここでは問わない。
  • 注3 「イメージを読む」 若桑みどり ちくま学芸文庫 2005年 P―150‐151

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